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2005/11/14

音楽サロン──秘められた女性文化史

ヴェロニカ・ベーチ[著]/早崎えりな+西谷頼子[訳]/四六判・上製・368頁

西洋音楽史において、「サロン」がはたした役割についてまとめた画期的な書。これまでも、ジョルジュ・サンド(ショパンの恋人)、マリー・ダグー(リストの恋人、コジマ・ヴァーグナーの母)、ファニー・メンデルスゾーン(フェーリクス・メンデルスゾーンの姉)などについては、それぞれの作曲家の伝記的記述のなかでも言及されてきましたが、彼女たちが「サロニエール」(「サロンの女主人」という意味のフランス語)として、音楽史の流れそのものに与えた影響については、定まった視座が与えられてきませんでした。彼女たちを、「音楽の才能をもちながら、男性上位の社会のなかで、音楽家として身を立てることをあきらめ、サロン運営という“裏方”にまわった女性たち」として描く本書の視点は、(異論をもたれる方もあろうかとは思いますが)かなり新鮮です。なによりもルネサンス時代から現代までの音楽史を「音楽サロン」という定点から逆照射した「もうひとつの音楽史」として、本書は多くの方々に読まれるべき価値があると思います。
編集者として個人的に面白かったのは、20世紀の音楽家多数を育てたパリ国立高等音楽院(コンセルヴァトワール)の教育者、ナディア・ブーランジェを「最後のサロニエール」として描いている点です。以前、編集を担当した『ある「完全な音楽家」の肖像──マダム・ピュイグ=ロジェが日本に遺したもの』(船山信子[編])で描かれたアンリエット・ピュイグ=ロジェの姿と重なるものも感じました。
初版部数が少ないため、ご購入をお考えの方はお早めにどうぞ。[genki]

◎追記
・いずみホール音楽情報誌『Jupiter』2006年2/3月号にて紹介していただきました。[2006/01/23]
・「classic NEWS」(12/26の項)にて、岩崎和夫さんがとりあげてくださいました。[2006/01/25]
・『音楽現代』2006年4月号にて、宮沢昭男さんが書評してくださいました。[2006/03/14]

 

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コメント

山下 剛さんの『もう一人のメンデルスゾーン』
有名な作曲家、メンデルスゾーンのお姉さん、ファニー・メンデルスゾーン=ヘンゼルの伝記、『もう一人のメンデルスゾーン』が出版されたそうです。山下 剛さんの力作。すばらしい本に仕上がっています。
本文も読み応えありますが、貴重な写真や、年表、人名索引など、女性ゆえに歴史に名を残すことができなかった、天才音楽家の生涯を再発見する資料としても大変充実しています。山下さんによると、ファニーの才能は、有名な弟をしのぐものだったとか。実際はファニーの作品なのに、弟の作品として発表されたものもあるんだそうですよ。

投稿: 泡盛マイスター | 2006/06/03 10:32

>泡盛マイスターさま

貴重な情報をありがとうございます。

ファニーにかぎらず、女性であるがゆえに、歴史に名を残さずに消えていった“幻の大音楽家”は数多いでしょうね。こうした研究が、どんどん世に出て、学校で教えられた音楽史が「ひとつの見方」にすぎないことが、もっと広まるとよいと思います。[genki]

投稿: 管理人 | 2006/06/05 13:39

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