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2005/12/01

フェリス女学院大学公開講座「デジタル音楽の可能性」(2005/11/30@フェリス緑園キャンパス)

音楽教育への新しいとりくみが認められ、文科省の「平成17年度現代的教育ニーズ取組支援プログラム」に採択されたフェリス女学院大学音楽学部の「若い女性の視点からの音楽コンテンツ創造」。その一環として始まった第1回特別公開講座を聴いてきました。

講師はアップルコンピュータ株式会社代表取締役社長・山元賢治さんと同社ソリューションエキスパート・吉崎誠多さん。

全体的な印象としては、山元社長によるアップルの企業宣伝に終始したという感じで(就職をひかえる学生にとってはそのほうがよかったのかも)、もうすこし音楽そのものの話が聴きたかったのですが、マカーである小生としては、日頃の鬱憤を晴らすような勇ましい話題のオンパレードで、楽しく聴きました。

社長の話が長すぎて、吉崎さんの話が導入で終わってしまったのは残念。GarageBand、Logicといったソフトを中心に、今回フェリスに導入された音楽制作環境の紹介でしたが、うーむ、あのていどなら自宅でもできるし、すこし知識のある学生なら常識的に知っているだろう内容ばかり。

アップルには、「音楽教育」というものへのヴィジョンがまだないのかもしれない、ということがはからずも浮き彫りになった観もあり、逆にフェリスのような現場の知が、これからどんどん積み上げられていくことが必要なのだろうと思いました。

GarageBandを例にとれば、あらかじめ用意された、個人ではとうてい使い切れない量のオーディオ・ループやMIDIのパターンを貼り付けていけば、短時間でしかも高品質の音楽を制作できる、といった類のソフトであるわけですが、音楽を専門に学びにきているような学生にそんなもの使わせてどうする、という気もします。膨大なプリセットを提供して、そこから自分の感性にあったパターンを選択させる、というのは、教育において有効なようですが、けっきょくは「選択肢の枠内でしか働かない想像力(創造力)」を育てる危険性もあるのではないでしょうか。その方向でいくかぎり、どんどん選択肢を増やしていくしかない。デジタルカメラの画素数が上がるように、「感性へのフィット感」は増してくるかもしれませんが、基本的に「あらかじめ用意された音」をコラージュしているだけ、という状態に変わりはありません。

昔のマックのソフトは違った。選択肢など示してもらえない代わりに、使い方の工夫しだいでそこには無限の可能性が感じられたものです。

アップルよ、どこへ行く?──そんなことを感じながら、帰途につきました。フェリスには、ぜひアップルも想像していないような音楽教育を実践してもらいたいものだと期待しています。[genki]

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