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2006/01/30

onblo talk series 01「現代音楽はおもしろい!」その6──Listener-Friendly 20th-Century Music?〈2〉

 またもや日々のあれこれに紛れて、日数が空いてしまいました。沼野です。
 前回は「現代音楽はやさしすぎる」というテーゼをたててみましたが、このときに「現代音楽」という語で私が主にイメージしていたのは、わりあいと最近の日本の作品です。
 ともかく現代音楽もどきというか、一見すると現代的な「なり」をしていながらも、その実、中身はあまりに古色蒼然たる音楽が多すぎるわけで、このあたりのギャップに無自覚な創作に関しては、今後積極的に批判していく必要があると思っています。やっぱり「やさしい」作品というのは、つまらないので。
 ……じゃあ、どういう音楽が「難しい」のかと問われる人もいるでしょうが、たとえば最近の日本でいえば、三輪眞弘の「逆シミュレーション音楽」のシリーズは難しくて面白い。もちろん、作曲の仕掛けや手順といった点ではむしろ単純きわまりないんですが、そこから生じる現象と、彼自身の擬似民俗学的なスキームの重なり具合は、相当にいい線いってると思います。

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 さて、私が休んでいる間に、今度は谷口さんから「聴衆にやさしい」現代音楽について、問題提起がありました。これはやはり私にとっても、関心のあるところです。そのレコード屋では、どういった音楽がListener-Friendly Twentieth-Century Musicのカテゴリーに収まっているのか分かりませんが、ともかく調性的で拍節的で旋律のはっきりしたものなのでしょう。
 ほかでも何度か書いたことがありますが、 Listener-Friendlyな現代音楽という場合、主に以下の3つの傾向に分類できると思います。

 〈1〉後期ロマン派的な作品
 〈2〉映画音楽的な作品
 〈3〉ミニマル音楽の類

 これらはもちろん、相互に重なりあったりするので、3つにきちんと分かれているわけではありません。特に「映画音楽」というのは我ながらひどい言い方で、これでは何でも入ってしまうわけですが、とりあえず雰囲気としては分かっていただけるのではないかと。駅の構内でよく「映画音楽名曲集」なんていうCDを売ってますが、その中に入っていそうなタイプの音楽です。
 3つとも、確かに「聴き手にやさしい」音楽ではあるわけですが、じゃあこれらが聴き手に支持されているかといえば、またそれはちょっと違う気がする。そもそも〈1〉と〈2〉は「本家」あるいは競合分野が激しくて、わざわざこのスタイルを「現代音楽」という枠組みで消費しようとは思わない人が多い。つまり〈1〉ならばマーラーで十分だし、〈2〉ならばポピュラー音楽がある。かろうじて〈3〉は「現代音楽」的ですが、もともと様式的な発展性が少ないので、近年のアダムズやライヒのように、オペラにでもするしかないという状況でしょう(もっとも私は彼らのオペラはきわめて重要な作品群だと思いますが)。
 してみると、Listener-Friendly Twentieth-Century Musicは、意外に人気がないとも言える。もちろんアメリカ国内の消費という点ではやや違った側面があるようにも思いますし、またどういったスタイルであれ良いものと悪いものはあるわけですが、しかし一般論としていえば、こうした現代音楽はフレンドリーなのに支持されない。ここらへんが「現代音楽」の面白いところです。
 このあたり、美術ではどういう対応関係になるのか。例えば村上隆みたいな戦略というのは、音楽ではとれないんでしょうか? 日本人独特の「リズム感のなさ」を逆手にとった、スーパーフラット・ミュージックとか……。その程度の開き直りやユーモアがあると、少しは現代音楽シーンも面白くなるんですが、みんな真面目すぎてどうにもならない。その意味でも三輪さんの「民話」は、笑えるという点で貴重です。[沼野雄司]

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