モーツァルト自筆の主題目録
数日前のエントリでモーツァルトについて触れましたが、トラックバックを貼ってくださったyasuさんのblogによれば、大英図書館(British Library)がオンラインで「モーツァルトの日記」を公開している、とのことで、さっそくのぞいてきました。
ふつうの「日記」ではなく、モーツァルトが1784年2月から死の直前の91年11月まで、作品を完成するたびにみずから記録していった主題の譜例付き作品目録──『全自作品目録(Verseichnuess aller meiner Werke)』です。
いや、これはかなりすごいです。原史料が目で見られるのもすごいけど、それを「見せる」仕掛けが凝ってて、なんというか「ギミック」的にも楽しめます。
まず、問題の史料の表紙があらわれますが、ドラッグ&ドロップの操作で、ページを繰っていくことができます。ここで注意。(きっとコンピュータのスペックにもよるんでしょうが、少なくとも小生の環境では)あんまり早くはめくれないのです。ゆっくりと注意深く──そう、本物の古書をひもとくときのように(!)──めくっていくと、どういう仕掛けになっているのかわかりませんが、ほんとうにページを繰るような感覚で、次のページがあらわれます。楽譜が細かくて読みづらいな、と思ったら、右下の「Magnify」ボタンをクリック。すると、ルーペがあらわれ、ご希望の箇所を拡大表示してくれます(これもドラッグ操作で移動させることが可能)。その曲が聴いてみたいと思われたかたは、「Audio」ボタンをクリック。すると、そのページに記載されている作品の一覧が表示され、ひとつひとつをクリックすると、音楽が再生される(ただし、おそらくMIDIで演奏させたピアノの音色)。「Text」ボタンをクリックすると、そのページに記載された作品についての解説が読める──と、なんともいたれりつくせりのサービスなのです。
こういうことで、「モーツァルトの謎」がすべて解きあかされてしまうわけではありませんが、作曲家とその音楽が身近になることはたしかで、これからもどんどんやってほしい、と思います。
ちなみに、今朝のNHKニュースでも、「モーツァルトの死後、コンスタンツェが(あろうことか)2つに切りはなして、別々の人物に売っぱらった自筆楽譜を、大英図書館が買いとって1つにつなげた」と報じていましたっけ(もちろん、こんな表現ではありませんが)。大英図書館、がんばってます。
yasuさん、貴重な情報をありがとうございました。[genki]
◎追記
・小生が直接担当した書籍ではありませんが、一昨年からずっと手がけてきたシリーズ「作曲家◎人と作品」の第1期(全12巻)をしめくくるものとして昨年9月に刊行された西川尚夫著『モーツァルト』をご紹介しておきます。シリーズのなかでも評判の高いもののひとつで、10年単位のロングセラーになるのではないかと感じさせる本格的な内容です。[2006/01/13]
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コメント
紹介していただきありがとうございます
随分と興味深い日記だったので、他の方たちにも伝えたいとおもいトラックバックさせていただきました。
日記の中でピアノ協奏曲か何かが目録に書かれているのに「今は存在しない」と聞いた瞬間に思わず叫んでしまいそうになりました。 熟していた時期だけにとても残念です。
が、今年のモーツァルトイヤーを盛り上げるのに一役かっているいい試みですね。
投稿: yasu | 2006/01/13 17:32
トラックバックそしてコメント、ありがとうございます。
ほんとうに“脂ののりきった”という表現のふさわしい時期ですものね。
おそらくは「書きとばしてきた」若い時期をすぎ、「作品を残したい」というおもいが芽生えて、「目録」をつける気持ちになったのでしょう。そこに無造作に記されている傑作のかずかずを見て、目がくらむ思いです。
投稿: genki | 2006/01/14 21:05