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2006/03/06

白石和良の「闘う古楽&トラッド乱聴記」002──ネーモー・コンチェルタート(2006/02/28@ル・タン・ペルデュ)

◆2006年2月28日(火)20:00/21:00/22:00 野毛(横浜) ル・タン・ペルデュ
ネーモー・コンチェルタート:辻康介(歌)福島久雄(ギター)

◎曲目(これは筆者の責でまとめたものです):
(ステージ1)I missing you(g. solo)/4枚のハンカチ/Quiet Night(g. solo)/ボラーレ/甘美な苦しみ/良い知らせを持ってきました/Oriental Dream(g solo)/もてもてサラセン人
(ステージ2)アルフォンシーナと海(g. solo)/あの山の上で/Alla Renella/小悪魔ちゃん/プルネッラのセレナーダ/きれいなねぇちゃんよ
(ステージ3)スパニョレッタ(g. solo)/ゴリツィア/死んだ男の残したものは/There is no salvation /Why didn't you say so(g. solo)/コーヒー・ルンバ/ネイチャー・ボーイ/奴らの足音のバラード 

* * *

 17世紀前後のイタリア歌曲や民謡を出発点にして、原語と日本語での超ユニークな音楽世界を展開している辻康介さんには、1990年代の半ばにロバ・ハウスでの衝撃(笑劇)的な音楽芝居『中世の居酒屋にて』で初めて接して以来、ゾッコンである。とくに最近は辻さん自身の率いるネーモー・コンチェルタートと、さらにバグパイプの超人の近藤治夫さん率いるジョングルール・ボン・ミュジシャンでの活動が目白押しで、嬉しい悲鳴を上げながら追いかけをさせてもらっているのだ。
 さてネーモーは最大編成では、辻さんのヴォーカルのほか太田光子(リコーダー)、平井み帆(スピネット)、近藤治夫(バグパイプ、シャルモー等)、福島久雄(ギター)、近藤広志(サックス、バスクラリネット)、伊左治道生(バイオリン)というまさに多彩・多才な面々を擁するグループ(これを辻さんは「なんにもネーモー」!という)なのだが、この日は福島さんとの2人だけの最小編成。意外にもこの2人でのライヴは初めてとのことで、お2人の音楽をじっくり味わえた。

 ステージ1では、まず日本語によるモンテヴェルディの《甘美な苦しみ》での包容力や、同じく日本語によるジェノヴァ民謡の《良い知らせを持ってきました》での独特のロマンチックな感覚がとても印象的だったが、私にとっての最大のブラヴォーはお馴染みの《もてもてサラセン人》。言葉をおいていくようなていねいな歌いまわしと、それに完璧に呼応しながらも鋭く切り込んでいくギターは本当に絶妙で、個人的にはこれまでなんども聴かせてもらったこの歌のパフォーマンスのなかでも、ベストではないかと思った。
 ステージ2では、ナポリのプルネッラ(道化)のセレナーダ(恋人の窓辺で歌う求愛の歌)がロマンティシズム炸裂。これも辻さん独自の素晴らしい日本語訳だ。日本語訳の歌といえば、ほかにも、サルディーニャ民謡の《あの山の上で》のちょっと翳りのある歌詞を朗々とした暖かい歌声で聴かせてくれたのもすごくよかった。
 そして得意の「語り」をあえて最小限にして淡々、粛々と演じられたステージ3では、まず武満・谷川による《死んだ男の残したものは》が本当に説得力があったし、さらに《ゴリツイア》ではトラッド・シンガーとしての辻さんに感激。ユーロ・トラッド・ファンとしての血が騒ぐ。このステージでの最大の収穫は日本語で歌われたキダス・アイの《There is no salvation》だった。これはもう辻歌謡そのもの。イナタイ魅力の辻用語満載で、ぐっと訴えかけてくるメッセージ・ソングの傑作だった。

 ラテンからジャズ、クラシック、そして中近東のサウンドまでを自在に行き来する福島さんの繊細で気迫に満ちたギターと、いつにもまして落ち着いた歌唱を展開してくれた辻さんによる充実したライヴで、辻さんの音楽世界の根底に流れるロマンティシズムと独特の寓話性をあらためて確認した一夜であった。[白石和良]

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