桜の下のヘテロフォニー──増上寺御忌大会(2006/04/06)
上越教育大学の茂手木潔子先生に誘っていただいて、芝・増上寺へ。浄土宗開祖・法然上人の忌日法要である「御忌大会(ぎょきだいえ)」を見物。
まず、野外での舞楽を観る。演目は《陵王》。きびきびとした舞が眼に心地よい。楽は、龍笛ソロからゆるやかに始まるが、途中かなりリズミックに高揚する。エンタテインメント性の高い曲だと感じた。
そのあと、大門から本殿まで、木遣りを歌う集団(鳶の方々?)を先頭に、大名行列、僧侶、御詠歌をうたう女性信徒などが練り歩く「お練り行列」。途中、本殿の中から雅楽が聞こえ、入口付近で木遣り、その後ろで御詠歌(ひとりひとりの鈴の音も)が、同時に、かつてんでばらばらに鳴り響く状態となり、境内全体が期せずしてなんともいえないヘテロフォニー状態に。茂手木先生が称揚する日本音楽の醍醐味──めいめいが好き勝手にやっているけれども、全体として大調和が立ちあらわれる──そんな響きに酔いしれる。
国立劇場のKさんのはからいで、特別に本殿に入れていただき、法要を拝観する。茂手木先生の隣で、聴きどころを教えていただきながらの、ぜいたくな体験。「グレゴリオ聖歌みたいでしょう。お稚児さんが導師に頭を触ってもらうところなんかも、キリスト教にそっくり」とのことばに納得。浄土宗の聲明は、かなり歌謡性の高いものであるらしい。豪華絢爛な内装、迫力のある聲明、雅楽、そして参列者全員で唱える「南無阿弥陀仏」の響き──コンサートホールではぜったいに味わえない、音楽の原初の姿をみたおもいがした。[木村 元]
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