戸ノ下達也の「近代ニッポン音楽雑記」003──始まりました「Tokyo Cantat 2006」
◆Tokyo Cantat 2006オープニング・コンサート「11の島からのメッセージ」
2006年4月30日(日)15:00 すみだトリフォニーホール
◎出演
司会:竹下景子
演奏:豊中混声合唱団/豊中少年少女合唱団、
淀川混声合唱団、ヴォーカルアンサンブル「EST」、
立正大学グリークラブ+OB・OG、
「モビールのように」をうたう会、
コーロ・カロス、Ensemble PVD、酔狂、
女声アンサンブル碧&きなりね 他
指揮:西岡茂樹、伊東恵司、向井正雄、
松村努、窪田卓、依田浩、松岡直記、
栗山文昭、藤井宏樹、野本立人、片山みゆき
* * *
今年も21世紀の合唱を考える会・合唱人集団「音楽樹」が主催して毎年ゴールデンウィークに開催されている「Tokyo Cantat」が始まった。今年はもう11回目を迎える。これまでの経緯等や今回の内容はホームページを参照されたい。なにしろこれだけのイベントの企画・運営を、すべて手弁当でおこなっているのだから驚異的である。
今回は「虹のかなたへ いい一歩」のテーマで、4回のコンサートと招聘講師によるセミナーを中心に、多彩なプログラムが用意されている。ここではそのオープニング・コンサート「11の島からのメッセージ」について、報告したい。
北海道に始まり、アイスランド、アイルランド、コルシカ、キューバ&カリブ沿岸、ハワイ、ニュージーランド、バリ&東南アジア、台湾&フィリピン、隠岐、沖縄と、世界の島の合唱音楽を、それぞれ特徴をもった11の合唱団が演じ、歌う4時間近くの演奏会であった。「ヨーロッパ大陸に始まった西洋音楽の潮流」が、それぞれの島国で「育まれている音楽」となって歌われ、聴かれることにより人々の中へ自然に溶け込み、日常化している状況が描き出されていた。それぞれの地域特性が、リズムやメロディ、そしてハーモニーとなって「音楽」となり、人々の中に溶け込んでいることを、あらためて感じさせられた。
演奏した合唱団は、それぞれ問題意識をもってその地域の特性や楽曲を理解し、音つくりや発声といった技術面のみならず、服装や演出に成果を開花させていた。みんな本当に歌うこと、聴き手を楽しませることが好きな「音楽家」である。出演した11団体に拍手。
すでに11回の実績を重ねている「Tokyo Cantat」は、もっと広く認知されてしかるべきであろう。けっして一部の好事家の企画ではなく、演奏すること、聴くことという「音楽」の根本を確認し問いなおし、皆で「音楽」の喜びを共有していこうという真摯な企画であることはまちがいない(私自身それを「Tokyo Cantat 2004」で実感している)。いまいちど、すべての音楽愛好者(プロ・アマを問わず、演奏者・聴衆を問わず)やメディアがこの企画の意義を再認識し、それぞれの視点で演奏し、聴き、考えるべきではなかろうか。主催側にとっても、リピーターや関係団体を重視するのも重要であるが、新たな支持や担い手の開拓も重要な課題であろう。
「Tokyo Cantat 2006」はこれからが本番である。ぜひ一度、この年に1回きりの企画を満喫してみてはいかがであろうか。[戸ノ下達也]
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