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2006/09/30

ディズニーの見ていた「敵」/罠を見破れ──『マトリックス』3部作

【メモ】「blooming*sound*blog」に2004/07/21 12:32 PM投稿の「ディズニーの見ていた「敵」」および同日09:43 PM投稿の「罠を見破れ──『マトリックス』3部作」を、「映画つながり」ということで、2本まとめて再録します。ふだんあまり映画を観ないのですが、ときたまこうやって「映画漬け」になることがあります。今年は『宮廷女官チャングムの誓い』の後半25本近く、いっきに観たけど、さすがに目が溶けるかと思った……。[genki]

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■ディズニーの見ていた「敵」

 3連休にもうひとつ休みをくっつけて、ひとあし早い夏休み。わが家は映画漬けでありました。娘が『ディズニー・オン・アイス』を見に行くというので、ディズニー映画をたてつづけに4本──『ムーラン』『シンデレラ』『美女と野獣』『リトル・マーメイド』。残念ながら『アラジン』は力つきて未見でしたが、それなりに予習の効果はあったようです。

 ぼく自身は『ムーラン』『シンデレラ』がはじめてで、ディズニーってすごい!を再確認。

 とくに『シンデレラ』がよかった。4本のなかではもっとも古い作品ですが、ストーリーと関係ないちょっとした部分までていねいに作られていて、作り手の愛情を感じます。音楽もよかった!

 それにしても、ディズニーの敵役って、『シンデレラ』の継母にしても『リトル・マーメイド』の鮹の姿の魔女にしても、同一人物を見ているよう。ものすごく憎たらしくて怖いんだけれど、平面的思考でどこか「バカなんじゃないか」って思わせるところがある。だからといって、けっして救われることはない(悪者にたいする“救い”を最後に用意する日本の“教育的”なおとぎ話とはそこが違います)。ステレオタイプといってしまえばそれまでですが、ウォルト・ディズニーには「人間にとっての敵」が何かということがはっきり見えていたんでしょうね。いつも滑稽なまでにワン・パターンな攻撃を飽きることなくしかけてくる悪。それをけっして許すことなく断罪するディズニーの「断固たる意志」を感じた連休でした。[木村 元]

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■罠を見破れ──『マトリックス』3部作

 連休はディズニーばかり見ていたかというと、そんなことはなく、子供が寝たあとは、遅ればせながら『マトリックス』3部作を3夜連続で見ていました。

 映画の出来としては、正直いって「うーむ」といったところ。評判のCGはやはりすごかったけど、とにかく息を抜く場所がなく(これってほめ言葉?)、前へ進むことしか知らない重量型の力士にひたすら押しまくられている感じ。3作目はさらに鉛のような重苦しさが加わって──ほとほと疲れました。

 でもそのいっぽうで、根本的には、ひじょうに共感するものがありました。ぼくが以前「皮膚感覚」とか「デファクト・スタンダード」ということばで表現しようとしたのは、思考停止に陥りやすい“罠”を見破り、つねに皮膚感覚に忠実に、そのつど根本的に考え抜くことの大切さですが、「マトリックス」ということばは、この世界に蔓延しているその“罠”を的確にあらわすものといえます。一般的に「究極の価値」とされている「真」「善」「美」、そして「愛」でさえも、この映画の中では、人間をマトリックスの世界に絡めとる「罠」ととらえられるのです。この徹底ぶりがこの映画をありきたりのハリウッド産エンタテインメントとはひと味もふた味も違ったものにしています。

 真・善・美・愛に代わるものとして、この映画でうちだされている概念は「選択」です。なにものにもとらわれず、自分の心の声に耳をかたむけ、考え抜き、そして選択する──。それができてはじめて、そのひとの愛や信仰は「正しい」といえるのです。客観的に通用する物差しなどなにもなく──それがあるように思わせるのが「マトリックス」の世界です──ただ、瞬間瞬間、自分の全人格をかけて「選択」する。そこに「絶対的な価値」がまさに「奇跡」のように生まれるのだし、自己とはその選択の積み重ねであってそれ以外のなにものでもないわけです。

 どんなに深遠さを装っても、「愛が地球を救う」といった24時間テレビのようなお題目に収斂しがちな商業映画のなかでは、革新的なまでに先を行った映画だと思いました。そしてそのひたむきな純情さが、重苦しいトーンを基調とするこの作品を、どことなくさわやかにしているのでしょう。[木村 元]

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