小鍛冶邦隆の「Carte blanche」004|今日の現代音楽フェスティヴァルの意味とは?
日本現代音楽協会(現音)主催の「現代の音楽展2007」全6夜が、3月4日から24日にかけて開催される。「現代の音楽展」は1962年以来45年間におよぶ歴史があり、現在では日本の現代音楽シーンを代表するフェスティヴァルのひとつといってもよいであろう。
日本における現代音楽フェスティヴァルの歴史は、1960年代の前衛ファッションを反映したものから、1970年万博以降ある意味権威化した現代音楽のありかたを映し出したのち、1980年代からはいくらか同人会的といってもよい真摯さを備えた「現代の音楽展」が、少しずつ日本の現代音楽の創作の場として認知され、定着してきたのは事実である。もちろん、現音会員の作品の発表を中心とした公演では、海外の現代音楽の潮流を直接知ることは難しいし、またそれらの反映を聴き取ることはさらにまれであったといえよう。
現音は国際現代音楽協会(ISCM)の日本支部(1949年から)として、1979年より毎年「ISCM世界音楽の日々からの夕べ」を開催することで、ISCM入選作の紹介をつうじて、今日にいたるまで海外の動向をあるていど伝える責務をはたしてきてはいる。しかしながらこうした海外音楽祭に相当するものは1990年代以降、企業財団が主催するさらに大規模な現代音楽フェスティヴァルによって、むしろ受け継がれているといえる。
ISCMに代表されるかつての一極集中的な創作地図は、今日信じられているように現代音楽が多極化して中心を喪失し、またその多彩な表象を巧緻に扱う一部の音楽学者=評論家たちの言表によって、ますます移ろいやすくなっている。
音楽作品の命運が、時流の果てに歴史によって裁定されるものだとするならば、「現代の音楽展」とはある意味で究極のアンデパンダン的理念にもとづくものといえるかもしれない。毎年、東京という都市文化の内部から繰り返し生みだされる音楽は、フェスティヴァルという時代のかりそめの祝祭にふさわしいものであるし、トウキョウ・コンテンポラリーとして祝福の時を生きる。
以下に6日間の各テーマを紹介しよう。
3月4日(日) 現代ピアノ・ワークショップ・コンサート
3月5日(月) 世界に開く窓〜ISCM“世界音楽の日々”を中心に〜南米特集
3月7日(水) 第13回朝日現代音楽賞受賞記念 山口恭範・吉原すみれ打楽器リサイタル
3月13日(火) 室内オーケストラの領域Ⅵ・トウキョウ・コンテンポラリー! シリーズ2
3月14日(水) 室内アンサンブル展II
3月24日(土) 吹楽IV〜日本の吹奏楽の祭典
「現代の音楽展2007」についての詳しい情報はwww.jscm.netを参照されたい。[小鍛冶邦隆]
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