[日誌]海老澤先生のパーティ、今村友子+寺神戸亮+多井智紀ライヴ
◎3/29(土)
夕方から溜池山王へ。海老澤敏先生の平成19年度文化功労者顕彰記念パーティ(ホテルオークラ)。
こんなに広い宴会場に入ったのははじめて。出席者は200人は超えていたと思う。あっちにも、こっちにもよく見かけるお顔が。海老澤先生にご挨拶しようと思っても、先生が会場に降りてこられるとすぐに「ご挨拶」の長蛇の列ができてしまうのであきらめて、ほかの方々とお話をする。音楽の演奏もあった。林美智子さんのケルビーノがとてもよかった。
湯浅譲二さんがいらっしゃったので、先日の個展が素晴らしかったというと、「作品を作った当時は理解してもらえなかったが、いまの若い人たちの感性でほんとうによくとらえてもらえた」と喜んでおられた。まさに「時代が追いついた」ということか。
海老澤先生からの「お土産」は、最新刊『モーツァルトの廻廊』(春秋社)とCD『小川京子/二つのモーツァルト』(日本モーツァルト研究所)。前者はながらく音楽之友社から出ていた「私のモーツァルト・クロニクル」シリーズの最新刊。2006年=モーツァルト生誕250年の狂騒を、そのただなかで静かに見つめた海老澤先生の視座を、春秋社の高梨さん、黒田さんがたしかなかたちにしている。「廻廊」というタイトルがいい。後者はやはりモーツァルト生誕250年の祝年に日本モーツァルト研究所がおこなったシリーズ演奏会のなかから、奥様の小川京子さんがピアノを弾いた2曲──ピアノ協奏曲第22番変ホ長調K482(前田二生指揮新東京室内オーケストラ)とクレメンティが編曲した交響曲第40番ト短調K550の室内楽版(神田寛明[fl]、堀正文[vn]、藤森亮一[vc])──を収録。どちらの演奏会もじっさいに聴いているが、後者については格別な印象をもっているので、もういちど聴けてうれしい(その日の感想は以前のエントリで書いたので、そちらを参照)。
海老澤先生とパーティの最後にようやくご挨拶。「なにか横文字の出版社をつくられて、ご活躍とか……」──独特のやわらかなユーモアは健在。1冊、作りかけで止まっている本があって、気になっている。なんとかしたいものだ。
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◎3/30(日)
朝5:00起床。寝ぼけまなこで新幹線。車中で小林敏明さんの『廣松渉──近代の超克』(講談社)を読了。
ちょうど社会的諸関係の中から「価値」の物象化的錯視が生ずるように、ここでも互いに異なった相対的な観測関係の中から「変換」を通じて共同主観的な物象化が生じ、それがいわゆる時空間や質量を成り立たしめているのである。(p.101)
芦屋で姉の三回忌。姉の生前は義兄の実家とはあまり縁がなかったのに、昨年からこうして3月末には芦屋へ足をはこぶようになった。不思議なものだ。芦屋川の桜は五分咲きといったところか。終日雨で、とくに寒い一日だった。
そのまま両親と嵐山の実家へ帰宅、1泊する。父のMacにSkypeをむりやりインストール。ぼくの使っているのと同じMacBookなので、ビデオカメラも内蔵されており、ヘッドセットもなにも用意せずにそのまま始められるのがいい。
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◎3/31(月)
朝から両親と四条河原町の高島屋へ。買い物をして食事をして、京都駅まで送ってもらう。新幹線車中の読書はレヴィ=ストロース『悲しき熱帯』(川田順造訳、中央公論新社)。民族学者の体験する「時間」は、廣松のいう「物象化した時間」ではなく、時系列の溶解した香り立つような「時間」だ。
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◎4/1(火)
ここ数日でたまった事務仕事、メールを片づけていたら、どんどん時間が。なかなか校正ができません。「ウラゲツ☆ブログ」のエイプリルフール・エントリがおもしろかった。
歯医者で最後に残った虫歯を治してから、高円寺へ。馬橋キリスト教会でピアニストの今村友子さんのCD『REVITALIZATION』発売記念ライヴ(写真でおわかりのように、装画は望月通陽さん!)。共演者が寺神戸亮さん(vn)と多井智紀さん(vc)。とくに寺神戸さんの「モダン・ヴァイオリン」を聴けるとあって、期待高し。
今村さんのことはよく知らなかったけど、楽曲の完成度がひじょうに高くて、びっくり。教会とはいっても「集会所」といった趣の質素なスペースで、今村さんも失礼ながら「普通」のかんじの方だったのだが、紡ぎだされる音楽の芳醇でノーブルなこと! 寺神戸さん、多井さんの演奏もお洒落でいきいきしていて、レギュラーなバンドのよう。
終演後、マネージャーの奥山さんに紹介していただいて寺神戸さんにご挨拶。1995年の《ダイドーとエネアス》や昨年の《オルフェーオ》、BCJやコレッリやルクレールなどのCDに接しているファンとしては、すでにして「巨匠」という意識もあるのだけれど、想像どおりまったく気取らず飾らないお人柄でうれしかった。多井さんにもはじめてご挨拶。Ensemble Boisや先日の湯浅個展など、最近よく聴いているのではじめてという気がしないのだけれど。
帰宅したら春秋社・高梨さんから鳥越けい子さんの『サウンドスケープの詩学』が届いていた。以前、『教育音楽』(小学版)に早川元啓さんの企画で連載されていたものをまとめたもの。1999年から5年間、60回の連載が、A5判・368頁の本になった。雑誌という“場”でひらかれた鳥越さん、早川さんの思いが、高梨さんの手で1冊の本としてところを得る。[genki]
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コメント
鳥越けい子さんの『サウンドスケープの詩学』の紹介、ありがとうございます! 雑誌に連載当時の会社からの出版はかないませんでしたが、しっかりと見守ってくださった方がいて、単行本という形で世の中に出たのは、本当に嬉しいです。高梨さん、そして春秋社さんには感謝、感謝です。
「サウンドスケープ」の本としてだけでなく、「音楽教育」の観点からも読んでいただけると、さらに興味深いです。
投稿: 早川元啓 | 2008/04/11 16:01
早川さん、どうも、おひさしぶりです。
『サウンドスケープの詩学』、たいへん奥行きのある本ですね。まだきちんと読ませていただいていませんが、あらためてどこかで紹介させていただこうと思っています。
またどこかでお目にかかれたらと思っています。
投稿: genki | 2008/04/11 18:38