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2008/08/20

白石和良の「闘う古楽&トラッド乱聴記」030──辻康介+福島久雄[2008/08/10]

※このエントリは独立したコンサート・レポートですが、そのまえのエントリ(白石和良の「闘う古楽&トラッド乱聴記」029──ビスメロ[2008/08/05])に関連しています。ぜひ、前のエントリをお読みいただいてから、この記事をお楽しみください。[genki]


◆昼から酒場で
 2008年8月10日(日)15:30〜 ぐりふぉれ屋(横浜市・能見台)

◎出演:辻康介(歌)
    福島久雄(ギター)

◎曲目(筆者の責による聞き書き):
[ステージ1]カンネテッラ、黒い子、4枚のハンカチ、小悪魔ちゃん、帰れソレントへ ほか
[ステージ2]オー・ソレ・ミオ、ボラーレ、少年、石油を掘ろう、ソスピーロ、昨日のしみ、人買船、ゴリツィア、ゴリアルドのアヴェ・マリア ほか

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 ルタンのライヴから数日後に、こんどは能見台のぐりふぉれ屋(ここもこじんまりとしたアットホームなお店だ)で辻、福島の2人のデュオを聴いた。ここでは小編成ならではのよさが出た落ち着いた雰囲気でさまざまな歌をじっくり歌を楽しむことができた。

 この日は2部構成で、ステージ1はまず原語によるナポリの歌が3曲歌われた。小さな音まできれいに響かせるじつにていねいな歌唱で、ギターの細やかな呼応も素晴らしく、さすがに気心が知れている。この3曲のなかでは《黒い子》でのギターの小気味よいノリや、《4枚のハンカチ》でのしっとりした歌唱がとくに印象的だった。

 そして日本語の古典歌謡が2曲。これは大正ロマン的な雰囲気が素晴らしく、また続く現代作曲家による歌曲も落ち着いた味わいで酔わされた。そして17世紀のイタリアの歌にもとづく日本語の傑作《小悪魔ちゃん》が登場。ひところのおなじみのレパートリーのひさびさの登場だが、朗々とした入魂の歌唱で、ギターも絶妙な合いの手を入れていた。

 ステージ1のラストは超有名なナポリ・ソング《帰れソレントへ》。エモーショナルで朗々とした歌声が耳にしみ入った。

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 ステージ2もまずカンツォーネの《オー・ソレ・ミオ》や《ボラーレ》が原語でじっくり歌わて、気分が盛り上がったところで、鮮烈な日本語の新作《少年》と《石油を掘ろう》が登場。先にフル編成のビスメロで聴かせたばかりのこれらの曲を、2人でどこまでできるのだろうか?と正直思ったが、実際には複雑な歌詞がビスメロ以上にハッキリとわかって、辻歌謡の新作をより深く堪能できたのだった。これは筆者にとって、この日の最大の収穫だったかもしれない。

 そして福島さんの自作のインスト曲《ソスピーロ》。ジャージーでどことなく中近東風のユニークな音楽が展開された。続いてルタンでも演奏された歌謡曲が登場し福島さんがファズを多用したギターの熱演を聴かせてくれた。さらに武満徹によるジャズ小唄ふうの歌曲《昨日のしみ》も歌われたが、これはあえてジャズ・ソング的な解釈を避けたユニークさが光った。そしてまたあの《人買船》。ここではニュアンスに満ちたギターをバックにした、すくっとした透明感のある歌唱によってていねいな物語を聴くように楽しませてもらった。

 続いて静かな入魂の歌唱による《ゴリツィア》、そして辻さんが以前から歌っている往年のTVアニメの主題歌が、安定しきった穏やかな歌唱で綴られてステージ2は終わりとなったが、もう1曲、アンコールとして歌われたのが《ゴリアルドのアヴェ・マリア》。これはしっとりした歌唱ながら、一種の色気すら感じさせる歌声だった。

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 ますます脂の乗ってきた辻さんと仲間たちによる音楽は、どのような組み合わせでも類のない楽しさと味わいにあふれている。誰でもいちど聴けば中毒になることは必須なのだ。今後の活動予定やCDは辻さんのサイト(http://plaza.rakuten.co.jp/nemotsuji/)で確認できるので、ぜひ一聴を![白石和良]

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