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2008/09/14

音楽非武装地帯 by onnyk[004]周尾淳一『山海経』

Sangaikyo周尾淳一『山海経』
Shuo Jun'ichi "SUTRA OF THE DESCRIBED WORLD"
(allelopathy / jam records, 2008)

このブログをご覧になっている皆さん! いつもお読みいただきありがとうございます。
私、onnykは自主レーベル「アレロパシー=allelopathy」を主宰しております。これまで4枚の、自分の関わった即興演奏系のCDを発表しています。このたび、思うところがあって、ちょっと異なる方向性の作品をリリースしてみました。これは岩手県花巻市在住の、孤立したミュージシャンが独力で製作したサウンドの構築物です。彼は多様な音楽を経験し、影響を受けていますが、本質的には彼自身の天性と才能によってここまで達しました。私は選曲と編集を手伝っただけなのですが、その過程で助言をもらった友人から完成品への感想をもらいました。それをCDの紹介文として使わせていただくことにしましたので、ぜひお読みください。そして興味をもたれたら、ご連絡いただきたいと思います。

◎このCDに関する連絡先: onnyk●gamma.ocn.ne.jp(●=アットマーク)

■一リスナーからの感想
 私のオーディオ機器で、リリース直前のマスター盤のチェックをしたいと言ってプロデューサーである知人が家に来た。
 当初、知人からはノイズ系と聞いていたが、むしろハリー・ベルトイアに近いと言ったほうが当たっていると思う(彼はベルトイアの作品もPSFレコードでCD化している)。あるいは懐かしのアンビエント系ともいえるが、"Music for Air Port" のような甘さはいっさいない。かといって、ノイズ系という言葉から来る「ハーシュな騒音」というイメージではなく抽象的ながら構築美にあふれた知的で硬質な美しさが印象的な作品集である。
 この手の作品にありがちな身勝手な要素は少なく、音響作品として稀に見る成熟度を誇っている。私がもしどこかの放送局で「現代の音楽」といった番組のディレクターを担当するならすぐに取り上げるところだ。3曲目《北山経》が特に美しい。
 オーディオ的には、耳には聴こえないままで、ウーファーが怖いくらいのかなりの振幅でユラユラと揺れている超低域に驚いた。普通のCDでここまで揺れているのは経験がない。さらに超高域まで万遍なく出ていてサウンド・チェック、あるいは、サウンド・リフレッシュ用のCDと同じような使い方も可能なほどだ。試しにCDトランスポートからパソコンに取り込んだ信号を、オーディオ・ソフトである「アドビ・オーディション」でスペクトル分析してみた。すると上が22000Hzまで出ていた! こんなことがあるのか!? 20000Hzで首切りのはずなのに……。この現象をいまだに理解できない。
 万人受けする音ではないが、高音質とその硬質な美しさは保証しよう。(中島達夫)

"a review by the listener" tasuo nakashima
one day, my friend "onnyk" came to my house to check the master disk of the new CD which will be released soon, and he is the producer of it, not the musician.
at first, he explained it as the kind of so-called "noise music" . however, my impression is similar to the experience on Harry Bertoia (onnyk also produced Beroia's CD from PSF records). though it reminded me of the old ambient music, here is no torelance, but very severe atomosphere. with the other words, it does not seemed to be a "harsh one" in the genre of "noise", but an abstract and compact constructive sound works.
i felt no selfish elements which were always observed in such solo musical works, and it achieved the rare maturity as the sound pieces. if i were a director of some radio station, i must broadcast it in the program of contemporary music hour. third track is the most beautiful one.
from the view of the audio system, i was surprised at the visual big vibrations of woofer speaker without any audible sound. no other normal CD showed it! furthermore, through the lower to the higher sounds appeared equally, and you can use it as the sound check disk. i tried to check it in spectrum analysis by intaking its signal from the CD transport to "adobe audition " the sound operating soft. it showed 22000 Hz at highest point! it is unbelievable phenomenon for the limitting level was set at 20000 Hz. i did not understand it even now.
shuo's music is not seemed to become very popular. however, i must say this CD has the hard but beautiful quality of the sound.

その後、別の知人からもう1通、感想をもらいましたので、以下に掲載させていただきます。

■音の粒やフレーズのたち現れかたや絡みが生き生きとして面白いですね。
 山海経の世界と無機的な音との組み合わせが異様な精神性を受けました。音色が私の苦手なチコチコデジタル系とのきわどい差も少し感じましたが、周尾さん独特の一種病的なバーチャル的閉鎖感覚?がノイズ音楽として密度よく成立している感じもしました。硬質なアシッド感もありますね。
 個人的趣味としてはこの音楽構造で、かつ音色がバーチャルでなく物神的アナログ感覚で実在感の濃いモノオトや楽音や気配で作られていく方向性なら申し分ないです。ただ冷徹に観念性を極めるというコンセプトであればわかりますが。でもカッチリしたコンセプトというより周尾さんはとても感覚的に音楽を作っている感じもいたしました。
 私の場合物質と非物質の境を溶かすみたいな感覚が好きなため温かみのある有機感が特になくてはならないようです。私も密室でひっそり内面世界を作るタイプなのです。
 しかし花巻にこんな方がいるというのは面白いですね。(成田護/舞踏家、音楽家)

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コメント

There are appreciation of ‘low-fi’ going. I’m also the one like to listening music by a tiny csstt player (mono). Often ‘low-fi’ listening makes you forgiving to little errors but more let you able to listen to essence of music, intentions of the player.

投稿: izumi | 2009/01/11 15:56

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山海経 “Sutra of the described waorld” 周尾淳一 Shuo Jun'ichi 1. 南山経 Sutra of the southern district 2. 西山経 Sutra of the western district 3. 北山経 Sutra of the n... [続きを読む]

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