沼野雄司のボストン通信07(2009/03/27・最終回)
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◆「子供・未来・夢」アチェ・チャリティーコンサート
2009年3月14日 19:00開演 逗子文化プラザホール:なぎさホール(神奈川県逗子市)
◎曲目と出演者(パンフレットと聞き書きによる)
[第1部]この道
1)バグパイプ(コルヌミューズ)・ソロ [近藤治夫]
2)この道(北原白秋:作詞/山田耕筰:作曲)[渡辺ローザ(ソプラノ)、高橋裕子(ピアノ)]
3)ナレーション[辻康介]
4)風の子供(竹久夢二:作詞/中田喜直:作曲)[2と同じ]
5)春よ来い(相馬御風:作詞/弘田龍太郎:作曲)[渡辺昌子(ソプラノ)、高橋裕子(ピアノ)]
6)花の街(江間章子:作詞/團伊玖磨:作曲)[2と同じ]
7)ソプラノサックス・ソロ[鈴木広志]
8)川(谷川俊太郎:作詞/湯浅譲二:作曲)[2と同じ]
9)揺籠の歌(北原白秋:作詞/草川信作:作曲)[5と同じ]
10)バグパイプ(コルヌミューズ)・ソロ [近藤治夫]
[第2部]そのとき僕は道端で
1)ベッラ・チャオ(イタリア民謡・ビスメロ編曲)
2)死んだ男の残したものは(谷川俊太郎:作詞/武満徹:作曲)
3)高床式の家(朗読)(アチェの高校生の詩)
4)元GAMの友達(南アチェの国立高校生Fadhli:作詞/佐藤万帆:訳詞/辻康介:作曲/福島久雄:編曲)
5)そのとき僕は道端で(ビディ県の国立高校生Rinaldi:作詞/佐藤万帆:訳詞/辻康介:作曲/福島久雄:編曲)
6)カーサドール(近藤治夫:作曲/福島久雄:編曲)
7)空飛ぶ絨毯(ニーザ:作詞/カロゾーネ:作曲/辻康介:日本語詞/福島久雄:編曲)
8)カーサロサーダ(近藤治夫:作曲/福島久雄:編曲)
9)月の出の唄(野口雨情:作詞/中山晋平:作曲/ビスメロ:編曲)
※第2部演奏:ビスメロ(Vis Melodica):
辻康介(ヴォーカル)
近藤治夫(バグパイプなど古楽器)
鈴木広志(サックス)
福島久雄(ギター)
立岩潤三(パーカッション)]
[アンコール]
ちいさな空(武満徹:作詞・作曲)[出演者全員]
2004年の津波で大きな被害をこうむったインドネシア共和国・スマトラ島北端のアチェ州。しかしこの地の苦難の歴史は自然災害だけではない。津波のときまでながらく続いた独立派のGAM(自由アチェ運動)とインドネシア国軍との紛争の傷跡は、こんにちでも人びとの生活と心に容易に消えない影を落としているという。この地の未来をになう子供たちのために図書館を贈ろうという趣旨のチャリティ・コンサートがおこなわれた。崇高な目的の企画だが、正直のところ筆者はチャリティの趣旨はよく知らず(すみません)、この日の第2部をつとめ、第1部にもかかわっているというビスメロの演奏をめあてに足をはこんだのだった。
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◆Kaori Ishikawa plays Tobias Hume(共同通信社オーディオ・ベーシック編集部主催)
2009年3月14日 14:00開演 Studio K'S(東京・お茶の水)
※17:00からも同内容でおこなわれました。
◎出演:石川かおり(ヴィオラ・ダ・ガンバ)
◎曲目(パンフレットと聞き書きによる):
[Part 1]Live Recordings/Kaori Ishikawa plays Tobias Hume:
トバイアス・ヒューム(1569頃−1645)作曲:
1)キャプテン・ヒュームのパヴァーヌ
2)ハーク、ハーク
3)グッド・アゲイン
4)兵士の決意
※以下は生演奏ではなくアントネッロ・モード・レーベルの録音音源の試聴会
[Part 2]24Bit/96KHz−Audio File Anthonello MODEの今後の発売予定作品より:
1)2009 SPRING発売予定『南米ペルーのバロック音楽トルヒージャ写本』(AMOE-10010)より「キリスト生誕のカチュワ」(演奏:アントネッロ&アドリアン・ヴァン・デル・スプール)
2)2009 SPRING−SUMMER予定『17世紀のハープ音楽』(AMOE-10011)より
《私の胸の中にある苦悩は》(モンテヴェルディ作曲)
《バレット》(作者不詳、17世紀イタリア)
(以上演奏:西山まりえ)
3)2009 SUMMER予定『メディチ・ブラス』(AMOE-10012)より
《アムローダ》(ドメニコ・ダ・ビアゼンザ作曲)
(演奏:アントネッロ)
[Part 3]24Bit/96KHz−WAV VS 16Bit 44.1 CD-A:
『バッハ:インヴェンションとシンフォニア』(AMOE-10009)よりインヴェンション1番
(演奏:西山まりえ)
オーディオ雑誌の主催で、アントネッロの石川かおりさんのガンバ・ソロ演奏を中心にした興味深いイヴェントがおこなわれた。会場はマンションの一室にフローリングの床をしつらえた感じのよいスタジオ/試聴室で、観客20人ほどで満員になるこじんまりとしたスペース。オーディオ雑誌のイヴェントというと、超マニアックな世界を連想するかもしれないが(内容的にはたしかにその面もあったのだが)、集まった面々はアントネッロのコンサートで顔なじみの方も多く、説明者もアントネッロ・モード・レーベルの関係者ということで、アントネッロ・ファンにとっては想像以上にアット・ホームな雰囲気のイヴェントになっていた。
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◆Rhythm & Baroqueライヴ
2009年3月10日 19:00開演 カーサクラシカ(東京・赤坂見附)
◎出演:Rhythm & Baroque:
飯塚直子(リコーダー&パーカッション)
寺村朋子(イタリアン・ヴァージナル)
◎曲目:
[ステージ1]
1)タランテッラ
2)グリーグ ソロ・ピアノのための作品より(アルバムの綴り/エレジー/ワルツ/鳥ちゃん/ハディング/トロールの行進)
3)J. S. バッハ:フルート・ソナタより(シチリアーナ/G線上のアリア)
4)テレマン リコーダーのためのソナタ(第1楽章〜第4楽章)
[ステージ2]
1)モンセラートの朱い本より《輝ける星よ》
2)パヴァーン
3)ピナタ
4)セファルディ《ラ・ローサ・エン・フロレーセ》
5)イントルチャのダンス
6)D. スカルラッティ:フルート・ソナタ(第1楽章〜第4楽章)7)グリーンスリーヴス
[ステージ3]
1)セファルディ《さよなら愛しい人》
2)アンヌ・ダニカン・フィニゴール:リコーダー・ソナタ(第1楽章〜第5楽章)
3)アントン・スティングル ギターとフルートのための組曲より(パッサカリア、カンツォーナほか)
4)ギョーム・ド・マショー《ドウス・ダム・ジョリー》(優しく美しい乙女)
5)チム・チム・チエリー
[アンコール]
《ドウス・ダム・ジョリー》
はじけるように溌剌としたリコーダーや各種のパーカッションを聴かせる飯塚直子さんの演奏は、以前からジョングルール・ボン・ミュジシャンや久保田潤子さんあるいは、武久源造さんとの共演などで親しんできたつもりだったが、チェンバリストの寺村朋子さんとのこんな素敵なデュオ(名前も素敵!)、R & B(Rhythm & Baroque)を組んでいたとは、昨年9月に赤坂のライヴ・ハウスで聴くまでは不覚にも知らなかった。そのあまりに自由奔放なライヴを聴いてすっかりぞっこんになってしまい、おふたりの出演した12月のクリスマス・コンサートや、飯塚さんもゲスト出演した今年1月の寺村さんのすばらしいチェンバロ・ソロ・リサイタル……と追いかけてきたのだが、R & Bとしては昨年9月以来になるはずのライヴをついに聴くことができた。
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◆笛の楽園〜ANTHONELLO IN NAGOYA第2回
2009年3月7日 15:00開演 宗次ホール(名古屋市)
◎出演:アントネッロ:
濱田芳通(リコーダー&コルネット)
石川かおり(ヴィオラ・ダ・ガンバ)
西山まりえ(バロック・ハープ)
◎曲目(*以外はヤコブ・ファン・エイク《笛の楽園》より):
[第1部]
[楽園の門]プレリュード
[第1の美女]美しき娘ダフネ、リッケポット
[教会の庭にて]鐘は鳴り響き(エティエンヌ・ムリーニエ原曲)、英国のナイチンゲール
[第2の美女]アマリッリ麗し(ジウーリオ・カッチーニ原曲)
[メランコリー]戻っておくれ私の愛(ジョン・ダウランド原曲)、*涙のパヴァーヌ(ジョン・ダウランド作曲)
[第3の美女]美しい羊飼いの娘フィリス(フランソワ・デ・シャンシー原曲)
[第2部]
[ふたたび楽園へ]プレリュード、緑の菩提樹の下で(作者不詳《ゾーシュ卿のマスク》に基づく)
[楽園でも戦争勃発か!?]*兵士の決意(トバイアス・ヒューム作曲)、バタリ《戦争》
[幻想と道化]ファンタリジア、ボフォンス《道化師》
[楽園との別れ]蛙のガイヤルド《今こそ去らねばならぬ》(ジョン・ダウランド原曲)
[アンコール]*忘却(ピアソラ)
昨秋に続き、響きの美しい名古屋の宗次(むねつぐ)ホールでのアントネッロの第2回目の公演。アントネッロは曲目によってゲストやファミリー的なアーティストを迎えたさまざまな編成でのステージを聴かせてくれるが、今回は「アントネッロ原理主義(者)」(BY ERIKAさん)にはたまらないコアの3人だけの編成だ。プログラムはアントネッロ/濱田さんにとってもっともベーシックなレパートリーの《笛の楽園》で、同名のCDやこれまでのかずかずのステージでの名演がある意味「耳タコ」の曲目ぞろい。しかし、ジャズ・コンボのライヴのように毎回演奏ががらりと変わるアントネッロのこと、今回はこの素敵な場所でどんなステージを聴かせてくれるのだろうかとワクワクしながら足を運んだのだった。
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◆イタリアバロック音楽の変遷XII〜ドレスデンの煌めき
2009年3月1日 14:30開演 近江楽堂(東京・初台)
◎出演:太田光子(リコーダー)
平井み帆(チェンバロ)
◎曲目:
[第1部]
1)F. M. ヴェラチーニ:ソナタ第6番イ短調[ラルゴ−アレグロ−アレグロ〜アダージョ−アレグロ]
2)B. ガルッピ:変奏曲ホ長調(チェンバロ・ソロ)
3)N. シェドヴィユ(伝ヴィヴァルディ):ソナタ第6番ト短調[ヴィヴァーチェ−フーガ・ダ・カペッラ−ラルゴ−アレグロ・マ・ノン・プレスト]
[第2部]
1)F. M. ヴェラチーニ:ソナタ第1番へ長調[ラルゴ(気品をもって)−アレグロ−ラルゴ−アレグロ]
2)T. アルビノーニ:ソナタ ハ短調[アダージョ−アレグロ−ラルゴ−ヴィヴァーチェ]
3)G. Ph. テレマン:ソナタ ハ長調[アダージョ−アレグロ〜アダージョ−アレグロ−ラルゲット−ヴィヴァーチェ]
[アンコール]
1)G. Ph. テレマン:ソナタ ヘ長調[第2楽章]
2)N. シェドヴィユ(伝ヴィヴァディ):ソナタ第6番ト短調[第4楽章]
リコーダーの太田さん、チェンバロの平井さんによる魅力的なデュオ・コンサートは、2002年からこの近江楽堂で年2回ずつ定期的におこなわれており、今回で12回目を迎えることになった。おふたりともかつてはネーモー・コンチェルタートのメンバーとして活躍していたし、そのほかさまざまなアンサンブルやソロでの個性的なすばらしい演奏で、かねてからぞっこんの方々なのだが、とくにこのデュオは相性も抜群で回を重ねるごとにますます密度をましてきた。今回はドレスデンに縁のある、おもにイタリア生まれの作曲家の特集だったが、演奏のいっそうの充実度に加えて、自由な開放感といったものを強く感じてなおさら感激してしまった。うがった見方かもしれないが、おふたりの個性や演奏されたイタリア音楽の本質はもとより、別記のレポートのように、最近平井さんがはじめたアイリッシュ(ケルト)・プロジェクトの波及効果もあるのではないかと思ったのだった。
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◆モグライブ(MOG LIVE)
2009年2月18日 19:00開演 BAR BOON(東京・新宿)
※2月19日にもおこなわれましたが、本稿は18日についてのレポートです。
◎出演:MOG(MUSIC OF GORO):
小池吾郎(ヴァイオリン、編曲)
上田美佐子(ヴィオラ)
高橋真二(ヴァイオリン)
諸岡典経(ウッドベース)
◎曲目:
[ステージ1]イパネマの娘
二人でお茶を(TEA FOR TWO)
フライ・ミー・トゥ・ザ・ムーン
キーラルゴ
ベサメ・ムーチョ
[ステージ2]フリー・インプロヴィゼーション
ヤード・バード組曲
ジンジ
オー・ブランジ・アモーレ
マイ・ファニー・ヴァレンタイン
ブルース・ストラガーノス
[ステージ3]スターダスト
ティコ・ティコ(TIKO TIKO)
ビギン・ザ・ビギン
フォア・ファンカーズ
※曲名は聞き書きです)
MOG(モグ)はMUSIC OF GOROの略称で、その名のとおりヴァイオリニストの小池吾郎さんを中心に、古楽系のオーケストラやアンサンブルでバリバリ活躍中の腕ききの弦楽器奏者たちが集ったユニークなグループだ。筆者としては、オーケストラ・シンポシオンやコンヴェルスム・ムジクム、そしてジョングルール・ボン・ミュジシャンなどでなんども演奏に接しているおなじみの方々である。もう何年もときによりメンバー編成を変えてライヴ活動を続けているのだが、なにせ売れっ子のミュージシャンたちなので、MOGとしてはそうしっちゅうはそのステージを観ることができない。その昔、アメリカのブルーグラスの世界にその名もセルダム・シーン(=めったに見られないという意味)という名手たちによるバンドがあったが、MOGもまさしくそのような貴重なバンドなのだ(ローカルな比喩ですみません)。
さてMOGが聴かせてくれるのは、古楽ではなく、よく知られたジャズやスタンダード、ボサ・ノヴァの名曲と小池さんのオリジナル。「なるほどクラシックのミュージシャンによるイージーリスニングね」などと早合点しないでいただきたい。彼らの演奏はたしかにリラックスした気分で理屈抜きに楽しめるものだが、弦楽器だけの編成ながら、ときにムーディに、ときにブルージーに、そしてスリリングにとくっきりと変化にとんだ味わいがたっぷり、さらに演奏が高揚してくると、緻密でテンションの高いストリングスが火花を散らしながらものすごい合奏をするという、最高のアコースティック・バンドなのだ。
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◆SAXOPHONES MEET KEYBOARDS 音楽の越境者たち、自由の名のもとに集う。
2009年2月15日 16:00開演 茨城県・水戸芸術館コンサートホール
◎出演:平野公崇(サクソフォン)
山下洋輔(ピアノ)
西山まりえ(チェンバロ)
◎曲目
[第1部]Baroque Fantasia:
1)サクソフォン・ソロによる即興[ss]
2)カール・フィリップ・エマニエル・バッハ(平野編曲):《スペインのフォリア》による変奏曲Wq.118−119[ss&cem]
3)チェンバロ・ソロ;ストラーチェ:《フォリア》[cem]
4)ダリオ・カステッロ:ソナタ第2番[ss,cem]
5)J. S. バッハ(平野編曲):ゴルトベルク変奏曲BWV988から5つの変奏[ss,cem]
[第2部]Jazz Rhapsody:
1)サクソフォン・ソロによる即興[ss]
2)《フォリア》による即興[ss,p]
3)ピアノ・ソロ:山下洋輔:やわらぎ[p]
4)山田耕筰:赤とんぼ[as,p]
5)山下洋輔:スパイダー[as,p]
[アンコール(第3部)]:
1)《フォリア》+《さくらさくら》による即興[ss,p,cem]
2)J. S. バッハ/平野公崇:プレリュード[as,p,cem]
※ss,as……平野公崇 p……山下洋輔 cem……西山まりえ
当代最高峰のチェンバロとピアノとサックスが共演するというこの前例のないコンサートは、西山さんのよき理解者でもある学芸員の矢澤孝樹氏の卓見と、幅広い音楽に対応するサックス奏者の平野公崇さんの驚くべき柔軟性によってなしえた企画に相違ないが、アントネッロと西山さんの即興精神にあふれた類のない演奏を以前から心酔してきた筆者としては、なによりも西山さんの即興演奏がついにジャンルの壁を超えて脚光を浴びはじめた記念すべきステージであり、日本の古楽演奏史にとってのエポックメイキングな「事件」といってもよいのではないかと思う。
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◆中村孝志“これしかない”−バロック・トランペットで室内楽−
2009年2月5日 19:00開演 杉並公会堂小ホール
◎出演:広瀬奈緒(ソプラノ)
大西律子(ヴァイオリン)
関口敦子(ヴァイオリン)
上田美佐子(ヴィオラ)
十代田光子(チェロ)
兼利剛也(コントラバス)
武久源造(チェンバロ、うた)
中村孝志(トランペット)
賛助出演:中村肇(トランペット)
◎曲目:
[第1部]イントラーダ(P. J. ヴァイヴァノフスキー)
祭壇または宮廷ソナタ集よりソナタ第4番(H. I. F. ビーバー)
ソナタ第11番(J. H. シュメルツァー)
ソナタ(G. フィンガー)
セレナータ《夜回りのうた》(H. I. F. ビーバー)
ソナタ(F. ラインハート)
[第2部]劇音楽《ポンドゥーカ》より〈武器をとれ〉(H. パーセル)
アン女王の誕生日のための頌歌《永遠の源よ》(G. F. ヘンデル)
劇音楽《アブデラザール》より組曲(H. パーセル)
《運命の時が》(H. パーセル)
オペラ《アーサー王》より〈美しい島〉、シャコンヌ(H. パーセル)
《狩りのカンタータ》(G. F. ヘンデル)
オラトリオ《サムソン》より〈輝くセラフィムが〉(G. F. ヘンデル)
ほんとうに楽しいコンサートだった! 今回の主役のナチュラル・トランペット(バロック・トランペット)奏者の中村さんや、もうひとりの主役の武久さんのお人柄がにじみでていて、すばらしい演奏者の全員が、心から楽しみながら自発的に自由に演奏している喜びがこちらにも伝わってきたのだ。
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◆ドーヴァー海峡の向こう側1
2009年1月18日(19:15開演) イギリス館(横浜・港の見える丘公演内)
◎出演
守安功(フルート、リコーダー、ホイッスル)
平井み帆(チェンバロ)
守安雅子(アイリッシュ・ハープ、バウロン、コンサーティーナ)
中尾幸代(ナレーション)
◎曲目
[第1部]
1)作者不詳(イングランド伝承曲):3つのホーンパイプ[男の子と女の子たち〜シロタエギク〜さびたナイフ]
2)T. オキャロラン(1670−1738):海は深い〜トマス・モレス・ジョーンズ−テーマと2つの変奏曲〜みんな生きている
3)J. ヤング(印刷と出版)/リコーダーの名人(1706,ロンドン)より:アバディーンの美女ジーン〜トランペットの調べ〜営みに潜む魂〜美しい森〜ウィンチェスターで結婚式があった〜ダイヤモンドの踊り
4)H. パーセル(1659−1695):2つのホーンパイプ[壁の穴〜泉の気持ち]
5)G. ケラー(1704没):グラウンド(1701/2,アムステルダム)
[第2部]
1)作者不詳:あなたは私のペギーを見ていない(1710,グラスゴー)
2)作者不詳(アイルランド伝承曲):私は眠っている
3)T. オキャロラン(1670−1738):プランクスティー・スウィニー〜エレナー・プランケット〜ミセス・マクダーモット・ロー〜ブリジット・クルーズ〜魂と肉体の別れ
4)H. パーセル(1659−1695):グラウンド ハ短調
5)D. パーセル(1664−1717):ソナタ へ長調(1698,ロンドン)[アダージョ〜ラールゴ〜アッレーグロ〜グラーヴェ〜アッレーグロ]
[アンコール]
1)F. ジェミニアーニ:年老いたボブ・モリス
2)T. オキャロラン:キャロランズ・コンチェルト
3)T. オキャロラン:ダニエル・ケリー
+ + + + + + + + + +
筆者のようなトラッド・フォークと古楽をともに愛好する者にとっては、これ以上うれしいことはないのだが、日本の最先端の古楽演奏の最近の潮流のひとつは、ズバリ「トラッド古楽」だといっていいだろう。別記《カンティガス》のように、アントネッロはラテン系のトラッド(民族音楽)との分かちがたくクロスオーヴァーした演奏を以前から聴かせているが、ここへきて、ブリテン諸島のトラッド・フォークと古楽演奏のクロスオーヴァーの試みがおこなわれるようになってきた。そのひとつは、アントネッロでも活躍している歌手の春日保人さんが昨年旗揚げしたソナール・カンタンドで、「魅惑のケルティック・バロック」と銘うち、スコティッシュ・ミュージックをまったく独自の演奏で聴かせて話題になっている。この魅力的なアンサンブルについてはこの春にも続編のコンサートが予定されているので、あらためてレポートしたい。さてここでとりあげるのは、ながらく日本における真のアイリッシュ・ミュージックの普及に貢献してきた守安夫妻と、ネーモー・コンチェルタートや太田光子(リコーダー)とのデュオなどで熱い演奏を聴かせてきたチェンバリストの平井さんが、驚くべき共演をおこなった1月のコンサートである。
経緯ははぶくが、守安夫妻と運命的な出会いをはたして共演することになった平井さんは、トラッド・フォークの演奏に接し、古楽演奏家として目からウロコの体験を積み重ねながらこの日の準備をしたものの、じっさいにどのような共演になるのかは想像もつかなかったという。それは聴き手にとっても同様で、ほんとうにワクワク、ドキドキしながら足を運んだのだが、はたしてその期待は裏切られなかった。会場は洋館のちょっとした応接スペースのようなところで、横向きのチェンバロのすぐ前に守安夫妻が陣どり、そのそばから部屋いっぱいにお客さんが座った。このアットホームで熱い雰囲気にふさわしい演奏が1曲目から展開されたのだ。
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◆Sound Museum in HAYAMA Vol.2〜ニュー・イヤー・ライヴ:古楽・ジャズ・民族音楽の出会い〜
2009年1月25日(日)19:00開演 逗子・神奈川県立近代美術館葉山
◎出演:ビスメロ(VisMelodica)
辻康介(vo)
福島久雄(g)
近藤治夫(Bagpipe)
鈴木広志(ss,as)
立岩潤三(Perc)
ゲスト:藤川正雄 aka. まー坊(Sax)
◎曲目
[第1部]
即興演奏(藤川正雄)
存在の自由区(福島久雄作曲)
即興演奏(近藤治夫)
測量船I(後藤國彦作曲)
詩人の唄(レオン・ポール・ファルグ作詞/エリック・サティ作曲/辻康介日本語詞)
測量船II(後藤國彦作曲)
九官鳥(野口雨情作詞/本居長世作曲)
測量船III(後藤國彦作詞・作曲)
人買ひ船(野口雨情作詞/本居長世作曲)
カーサドール(近藤治夫作曲)
[第2部]
谷神(立岩潤三作曲)
私は叫びたい(作者不詳/14世紀イタリア)
アルカシム(福島久雄作曲)
即興演奏(鈴木広志)
空飛ぶ絨毯(ニーザ作詞/レナート・カロゾーネ作曲/辻康介日本語詞)
カーサローザ(近藤治夫作曲)
きれいなねえちゃんよ(カブリエッロ・キアブレラ作詞/ヴィンチェンツォ・カレスターニ作詞/辻康介日本語詞)
ゴリアルドのアヴェマリア(作者不詳13世紀《カルミナブラーナ》)
月の出の唄(野口雨情作詞/中山晋平作曲)
[アンコール]べラチャオ(イタリア民謡)
+ + + + + + + + + +
「うぉー、今回はこの広大な空間で演奏するのかぁ!」……今年のビスメロ音会始めは、近代美術館の大きな展示スペースでのライヴというシュチェーション。天井が高く、総フローリングの床、しかも部屋の三方は大きな開口部があり、隣の部屋に吹き抜けになっているという気が遠くなるくらいのエアボリュームと響きの場所でおこなわれたのだった。ビスメロ(Vis Melodica=旋律の力)は、中世音楽からカンツォーネや日本語の歌までなんでも個性的に歌ってしまう鬼才ヴォーカリストの辻康介さんを中心にして、それぞれが幅広い音楽性をもったすご腕のミュージャン4人が集ったジャンル分類不可能のスーパー・グループだ。昨年は待望のファーストCDを発表し、さまざまな場所で積極的な演奏活動を展開してきたが、その音楽の広がりと演奏のパワーはとどまるところを知らないかのようだ。
さて、このようなスペースでのライヴじたいは、最近ではさほどめずらしくはないかもしれないが、ビスメロといえば、あのル・タン・ペルデュ(横浜市野毛町のベルギー・ビールのビアホール)のような、それこそ肘をぶつけあうくらいのスペースに牛詰めの状態での超熱いライヴには定評のある(?)グループなので、それとはおよそ正反対のこのような場所ではいったいどうなるのか……はたしてその結果は、想像をはるかに超えた異次元の体験といおうか、クールで壮絶にすばらしいパフォーマンスが展開されたのだった。
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◆アントネッロ第2回定期公演「ニューイヤーカンティガス」
《聖母マリアのカンティガス》
2009年1月8日(木) 東京文化会館小ホール
◎出演:アントネッロ:
花井尚美(歌)
藤沢エリカ(歌、ダルシマー)
岡庭弥生(歌)
春日保人(歌、フルート)
西山まりえ(歌、ゴシック・ハープ、オルガネット、カスタネット)
矢野薫(プサルテリー、オルガネット)
石川かおり(フィーデル)
中村孝志(スライド・トランペット、コルネット)
わだみつひろ(パーカッション)
濱田芳通(音楽監督/リコーダー、コルネット、ショーム、スライド・トランペット他)
◎曲目:
[第1部]
序《詩を作り歌うとは》
第1番《詩を作り歌います》
第10番《薔薇の中の薔薇》
第15番《すべての聖人たち》
第384番《その大変な美しさゆえに》
第167番《聖処女を信頼する者は誰でも》
第139番《驚くような慈悲にあふれ》
[第2部]
第100番《聖母マリア、夜明の星よ》
第166番《人々の体は罪によって》
第60番《アヴェとエヴァの間には》
第26番《驚くには値しません》
第422番《神の母よ》
第37番《美しく驚くべき奇蹟を》〜第159番《聖母マリアは許しません》〜エスタンピー
第425番《喜びよ、喜びよ》
[アンコール]
モンセラート写本より《死に向かって突っ走れ》
カンティガス第15番《すべての聖人たち》
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◆ライブ「如月の巻」
2009年2月7日 Live Bar TUBO(南烏山)
◎出演:朋郎
内藤哲郎(和太鼓、perc.)
武田朋子 (篠笛、ピアニカ、和太鼓、perc.)
◎曲目:
[第1部]
1)七味
2)大江戸小町線
3)月光花
4)SAZIN
5)誕生日
[第2部]
6)笛SOLO
7)太鼓SOLO〜更夜囃子
8)なつメロ・メドレー
9)大航海
10)戻り道
11)星空の渉
[アンコール]晴れたら
+ + + + + + + + + +
このところずっと熱をあげて追いかけているのが、この「朋郎(トモロウ)」である。
きっかけは国宝級の笛のヴァーチュオーゾ、一噌幸弘さんのグループ「しらせ」の昨年夏のコンサートだった。圧巻の和風プログレッシヴ・サウンドに釘づけにされたのだが、そのステージで助演者の「少女早吹隊」(笑/これは一噌さんの命名)のひとりとして超絶技巧を披露した武田朋子さんが、和太鼓の内藤哲郎さんとデュオを組んで自身の活動をしていると知って、早々、生演奏とCDに接し、すっかり虜になってしまったのである(ちなみにもうひとりの少女早吹隊、山田路子さんの「打火打火」も魅力的なパフォーマンスを展開するグループなのだが、これはまた別の機会にレポートしたい)。
それにしても、基本的には笛と太鼓だけの「朋郎」の音楽の芳醇な素晴らしさは、なんと形容すればよいのだろう。江戸囃子の伝統を受け継ぐ武田さんの篠笛の調べは、幽玄で滋味あふれるものでありながら、ほんとうに親しみやすくて耳にすうっと入りこんでいく。いっぽう、かの「鼓童」出身の内藤さんは和太鼓やパーカッションを縦横に駆使して、極限のパワーと多彩な語り口でリスナーの耳を金縛りにする。さらに素晴らしいことに、朋郎は同様な演目のステージでも聴くたびに新たな引き出しを開陳するかのように、あるときは味わい深い伝統色、またあるときはクールでスタイリッシュなジャズ色と、さまざまな表情を見せてくれるのだ。曲目は一部伝統曲のほかは伝統音楽をベースにしたおふたりの自作曲で、すべて親しみやすいタイトルがついているのだが(そしてじっさい親しみやすい曲ばかりなのだが)、凡庸軽薄な伝統音楽のモダニズムなどとは対極にあるようなほんものの音楽のすご味をたたえているのだ。それを前提にしたうえでいうのだが、またおふたりともフォトジェニックで、なによりも「朋郎」はじつにカッコイイのである。
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